
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』の公開に合わせ、本作のサウンドトラックと、澤野弘之さんがプロデュースするSennaRinさんのコンセプトEP「LOSTandFOUND」が発売されており、各種音楽サービスで配信中だ。
コンセプトEPには、「CIRCE(サーシー)」と[Alexandros]の川上洋平さんをゲストボーカルに迎えたデュエット曲「ENDROLL」の劇中挿入歌2曲に加え、作品の世界観を拡張するモチーフ楽曲も収録。
今回、澤野弘之さんとSennaRinさんのお二人に、各楽曲の制作秘話について語ってもらった。
澤野弘之×SennaRin オフィシャル対談
――『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』にSennaRinさんが挿入歌で参加することになった経緯をお聞かせください。
澤野弘之:『キルケーの魔女』の音楽打ち合わせより少し前に、エグゼクティブプロデューサーの小形(尚弘)さんとお会いする機会があって、前作に続いて今回も挿入歌を数曲作りたいという話が出ていました。小形さんは僕がプロデュースしているSennaRinの曲を聴いてくれていて、その時に「SennaRinさんの声も合うかもしれませんね」とおっしゃってくださったんです。それならぜひトライさせてもらいたいと。その後、制作サイドから「2箇所のシーンに挿入曲が欲しい」と要望があったので、1曲はSennaRinのソロ、もう1曲はデュエットという形で作っていきました。その後、デュエット曲のボーカルとして、小形さんから [Alexandros]の川上洋平さんの提案がありました。
――SennaRinさんが『閃光のハサウェイ』やガンダムシリーズに関わるのは今回が初ですが、お話をいただいた時の感想はいかがでしたか?
SennaRin:ガンダムというたくさんの世代の方から愛される作品に携わることが決まって、すごく嬉しい気持ちでした。直接作品に関わるのは今回が初めてですけど、以前、澤野さんが劇伴を担当された『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』の劇中歌「A LETTER」の日本語詞カバー「Ray」をYouTubeに公開したことがあって、その時に『ガンダムUC』を見て作詞した経験があったんです。今回もまず『閃光のハサウェイ』の第1章を観て、すごく雰囲気がかっこいい作品だと思いましたし、その後、澤野さんに勧めていただいて『機動戦士ガンダム』の劇場版3部作と『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を観たら、歴史や人と人との繋がりが見えてきて、より『閃光のハサウェイ』を面白く感じました。ガンダムの魅力や面白さもわかったので、もっと他のガンダムも観てみたいなと思いました。
――挿入歌の2曲、SennaRinさんがソロで歌う「CIRCE」と、SennaRinさんと川上さんのデュエット曲「ENDROLL」はどんなシーンで使用する想定で制作を進めたのでしょうか。
澤野弘之:「CIRCE」はギギ(・アンダルシア)の日常のシーンで使いたいということで、村瀬修功監督のイメージ的には「海外映画の女性主人公が日常生活を送っている時に後ろで流れているようなポップな洋楽」とおっしゃっていたので、そういう感覚で取り掛かりました。「ENDROLL」はハサウェイ(・ノア)とケリア(・デース)の昔の関係性を描く回想シーンで使用するということで、切ないバラード曲というお話をいただいて、観ている人たちがグッとなるようなメロディやアレンジを心がけました。

――作詞はどちらもSennaRinさんが担当しています。「CIRCE」はどんなイメージで歌詞を書きましたか?
SennaRin:ギギの日常シーンで使われるので、彼女がどう物事を感じ、どんな風に人のことを思うのか、自分なりに「ギギだったらどうするか」を考えて作詞していきました。ギギは勘が鋭くて予言めいた発言をよくしますし、大人びているけれど幼い言葉や行動もある、掴みどころのない、私とはかけ離れた女性で。そんな彼女がハサウェイに対して想いを伝えるシーンは明確にはないのですが、やっぱりハサウェイのことを考えていて、知りたいと思っている。ハサウェイとケネス(・スレッグ)の間で思わせぶりな態度をしたり、不安定な部分が垣間見えるので、そこを歌詞にしました。
――SennaRinさんはギギと友達になれそうですか?
SennaRin:うーん(笑)。ギギは心から分かり合ったりするタイプではなさそうですし、自分の気持ちを繕って優しく接するタイプでもなさそうじゃないですか。
澤野弘之:でも、ギギの奇抜な発想とかを面白がりそうなところはあるよね。「なるほどそういう考えがあるんだあ」みたいな。
SennaRin:確かに!私は変わった人が大好きなので、楽しんでそばにはいれると思うんですけど、ギギが私のことを嫌いそうな気がするので、仲良くしてくれないと思います(笑)。
――『閃光のハサウェイ』の人間関係の中で、お二人は誰に一番肩入れしますか?
澤野弘之:僕はケネスですね。チャラい雰囲気を出しつつ真面目なことも考えていて、かっこよくてモテそうじゃないですか。ああいう大人になりたかったなという単純な理由です(笑)。
SennaRin:私はギギですね。さっきお話ししたようにギギは私とかけ離れすぎていて全く予測不能なので、興味があります。澤野さんと一緒で、自分にないものがあるからこそ興味が沸くのかも。
――もう一方の「ENDROLL」の作詞やレコーディングはどのように進めたのでしょうか。
SennaRin:澤野さんのデモを聴きながら、ハサウェイとケリアのシーンの絵コンテを見て、イメージを膨らませながら作詞しました。「ENDROLL」は音数が少なくてメロディに乗せられる言葉の数も少ないので、その中で切ない描写ができたらいいなと一言一言進めていきました。「ENDROLL」というタイトルは、回想シーンで流れますし、2人が進む道は決まっていたので、「楽しいシーンはもうエンドロールでしか流れない」というイメージで付けました。
澤野弘之:レコーディングは最初にSennaRinのパートを録って、そのデータを川上さんにお渡ししたうえで歌録りに来ていただきました。歌のアプローチを作り込んできてくださって、川上さんから出てきたものが素晴らしかったので、そのまま進めてもらって最終的にこちらで合わせました。
――男女デュオということで、ハサウェイとケリアが掛け合って歌うイメージが浮かびます。
SennaRin:2人の掛け合いのイメージもありますけど、ハサウェイはもうギギに惹かれていて、ケリアのほうが想いを引きずっている印象があって。そして私は女性なので、どちらかといえばケリア寄りの気持ちで歌いました。コンセプトEPの『LOSTandFOUND』には私がソロで歌っているバージョン(「ENDROLL -HaThA-」)も収録されるのですが、それはケリアがハサウェイのことを愛称のハサと呼んでいるのが切ないなと感じたからです。
――ケリアに共感できる部分はありますか?
SennaRin:うーん……(笑)。でも、人として通っていく一つのフェーズでは共感するところはありますし、「ENDROLL」は失恋ソングとしても受け取れるので、楽曲には感情移入して歌えたと思います。

――それら2曲の挿入歌を含むコンセプトEP『LOSTandFOUND』は、その他にも『閃光のハサウェイ』をモチーフにした新曲「LAST」「DELUSION」「LOSTandFOUND」が収録されています。
澤野弘之:せっかく挿入歌2曲で関わるのであれば、SennaRinをプロデュースしている身として、『閃光のハサウェイ』の世界観や作品全体に対してコンセプト的な音源を作れたら面白いなと思い、小形さんに提案して実現しました。楽曲に色々な意味を付随させて面白がってもらいたいなと。曲に関しては、書き溜めていたストックの中から作品の世界観にマッチしてイマジネーションを広げてもらえそうな3曲を選びました。歌詞に関してはSennaRinに任せて、作品の世界観に合わせた内容にしてもらいました。
SennaRin:私は誰かの気持ちになって歌詞を書くのが好きなので、今回も作品に登場する特定の人物の視点で作詞しました。「LAST」はギギから見たハサウェイ、「DELUSION」はトラウマを抱えるハサウェイの気持ち。「LOSTandFOUND」だけは作品全体、もっと言えばガンダムシリーズ全体を通して感じたことを書いています。
――「LAST」は喪失感の滲むバラード調の楽曲ですが、ギギのハサウェイに対する感情を描いたのですね。
SennaRin:「LAST」にキャッチフレーズをつけるとしたら、「今、世界が終わるとしたら、誰の手を握りたいですか?」という曲になっています。
澤野弘之:そんな映画予告のナレーションみたいな(笑)。
SennaRin:ギギはハサウェイにそれを問いかけるんじゃないかと思うんですよ。ハサウェイが自分に別の女性を重ねていることに気づいているからこそ、思わせぶりの一種として「私は握りたいけど君はどう?」と聞くような。
澤野弘之:鋭い意見(笑)。そうやってキャラクターを考察して書いているのは面白いですよね。僕は歌詞の意味を深く考えるよりは響きで判断するので。彼女の意図で書かれたものが、聴く人によって全然違う取り方をされても面白いと思います。
――「LAST」というタイトルにした理由は?
SennaRin:私が『閃光のハサウェイ』のラストを歌いたかったからです。『キルケーの魔女』は3部作の第2章ですが、物語の結末が楽しみで楽しみで……(笑)。それでこのタイトルにしました。
――「DELUSION」は重々しい雰囲気かつビートの効いた1曲。歌詞はハサウェイのトラウマにフォーカスしたとのことですが。
SennaRin:ハサウェイのことを調べるなかで、彼に初恋の少女が命を落とした過去があることや、海に対してトラウマがあることを知って。ものすごく暗い海の奥深くへ潜って落ち込むシーンが浮かんだので、そういうハサウェイの黒い部分を歌詞にしたくて書きました。
澤野弘之:楽曲自体はEP全体のサウンドバランスとしてこういう曲調があれば面白いかなと思って作ったのですが、彼女の歌詞がハマることで、重たさや暗さだけでなくエッジも立っているような世界観に仕上げられたと思います。戦闘シーンで流れてもかっこよく聴けるんじゃないかなと。途中のラップっぽいパートは、過去にSennaRinの別の楽曲でもラップを取り入れたことがあって、そのアプローチが面白かったのと、ミステリアスさや場面転換を演出できると思って入れてもらいました。
SennaRin:情緒不安定で泣きそうな姿を浮かべて歌いました。ラップのところではブツブツとした暗いトーンで、歌い方だけでも落ちている部分を表現できたかなと思います。
――そして「LOSTandFOUND」はガンダムシリーズ全体への思いが込められていると。
SennaRin:作品を観終わった後に、その作品を連想して思いを馳せられるような楽曲になればいいなと思いました。澤野さんから「この部分は『Again, again, again』で繰り返したい」という要望があったので、そこから繰り返しの言葉を入れたり、サビは“運命(さだめ)”を描くイメージで歌詞を書いて。結果的に、泣きながら歌えるような、人生のテーマみたいな壮大な合唱曲のようになりました。
澤野弘之:自分的にはクライマックス感を演出できればと思って作った曲です。僕が関わってきた『ガンダムUC』や『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』も超ハッピーエンドではなかったかもしれないけれど、みんな前向きに“それでも”と前に進もうとする物語だったと思うんですね。ハサウェイもどんな終わり方であれ、結果として色々な人たちが前を向いて進んでいく、そんなエンディング曲のイメージで作っていきました。
――最後に『閃光のハサウェイ』のファンに向けてメッセージをお願いします。
澤野弘之:5年ぶりの新作ということで、5年経ったからこそ見せられる作品になればと思い、音楽にもエネルギーを込めて作りました。挿入歌も含めて、映像を見た後もイマジネーションを膨らませながら聴いてほしいです。次回作の公開がいつになるかは僕もわかっていませんが(笑)、その間にこのコンセプトEPで世界観を広げてもらって、最終章まで楽しんでいただけたら幸いです。
SennaRin:ガンダムを観たことがない方にも、この曲をきっかけに作品に触れてもらいたいですし、自信を持ってお届けできるEPになったと思います。EPを聴いて、作品を観て、と往復するたびに、新しい気づきや魅力が出てくると思います。たくさん聴いていただきたいですし、作品と共にこのEPも楽しんでいただけたらなと思います。
SennaRin「LAST」Anime Music Video 公開中!
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』CONCEPT EP SennaRin「LOSTandFOUND」

発売日:2026年2月4日(水)
価格:2,200円(税込)
品番:VVCL 2843
※『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』描きおろしイラスト仕様
⇒ご購入はこちら
<収録楽曲>
01. CIRCE
02. LAST
03. DELUSION
04. ENDROLL by 川上洋平 [Alexandros]×SennaRin
05. LOSTandFOUND
06. BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)by 澤野弘之 feat. SennaRin [bonus track]
07. ENDROLL -HaThA-